
つれづれなるままに・・・
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2008年03月07日
(イメージ)
その青年とは武尊(ほだか)山(2158m)の山頂近くで出会った。盲目であった。
前を行く人の腰に巻かれた紐を1m程の距離をおいて手の平に持っていた。その紐の振動で、すべてを悟るのであろうか、身体中の神経を紐に集中しているように見える。
その光景を目にしたとき、驚きのあまり、脈搏も呼吸も止まり、音の全くない世界に立ち尽す自分を感じた。時が止まった。息を飲むとはこういうことなのだろうか。5cm足を踏み外せば、転がり落ちる登山道を、大小の岩がごろごろしている厳しい足元を青年は紐にすべてを掛けて読みとり歩を進めている。
40代かと思われるパーティが登れないと断念して下山した、あの岩場をこの青年はどのようにして登ったのであろうか、そしてこれからどのようにして下りるのであろうか。
沢山の疑問が頭を過った。
色々と聞きたかった。
でも声を掛けるには、二人の姿はあまりにも神神しかった。
私が今まで生きて来たすべてを掛けても、この一瞬にも充たないと思えた。
この青年を駆り立てる山とは一体何なのであろうか。
それは私には、とうてい及びもつかない深き思いの中にあるのだろう。
その青年には青い空も、白い雲も、風も、美しい山脈も、花も見えているに違いない。
甦る何かを感じているに違いない。
生きている自分を感じているに違いない。
見ているから見えている訳ではない。
見えていなくても見えている人がいる。
悟っている人がいる。
それからすでに何年かの時が過ぎ去ったが、思い出すと清清しい気持になれる。
山や二人にありがとうと言える気持になれる。
この事は私の大切な宝物として心の中にしまっておきたい。 O.T.
投稿者 souken : 2008年03月07日 08:52